「よし、。ミッションだ!!」
「はい?」
放課後の生徒会室で仕事をこなしていた時だった。
いつも通りに会計の仕事をしていると、昼休みに食べきれなかったお弁当を食べていた友人がいき
なり言い出したのだった。ちなみに友人は生徒会メンバーでは無い。
「ミ、ミッションですか…?」
「そう!君に任務を言い渡す。心して聞きなさい!!」
「は、はぁ…」
どうせ碌な事じゃない。
そうはわかっていても、何となく、長年の付き合いだからなのか聞いてやろうという気になった。
「生徒会長、跡部景吾を惚れさせろ!!」
「はぁぁぁぁぁぁっぁ!?」
碌な事じゃなかった。
訳が判らない。一体何と言ったんだ?
何?跡部をどうしろって?
「ご冗談でしょ?」
「いやいや、マジだって」
「というか、私跡部の事好きなわけじゃないんだけど」
「だってこれミッションだって言ったじゃないの」
「……どういうこと…?」
意味が分からない。
この友人は時々訳のわからないことを言い出す。いや、いつもか。
「跡部ってさぁ、かなりモテるじゃない?」
「まぁね、あそこまでいくと才能なのかな、とは思っていたけど」
「うん。でもそのわりには浮いた噂って無いじゃない」
「…そう言えば…、そうだねぇ。無いわ」
「でっしょー?だから、よっ!!」
ポン、と両肩をしっかりホールドされる。
ギリギリと友人の手が肩に食い込んでくる。地味に痛い。
しかしそれを知ってか知らずか、友人の手力(目力みたいだ)はますます強くなる。
「跡部は一体どういう人がタイプなのかなー、と思ってっ」
最後にハートマークを付けて、ウインクをして来た。
今までこの友人と幼稚舎時代から長くつるんできたが、これほど憎たらしいと思った事は無い。
あ、いやあったかも…しれないけど、覚えてない。
「そこで何で私に?他の人に言ってよ」
「跡部がキャーキャー言うだけの女子に興味が無いのはわかったの。で、みたいな、全く
と言っていいほど逆のタイプ…つまり跡部に興味の無い女子ならどうかなって思って」
友人の発想にはため息が出る。
何てくだらない。
「…大体、自分に興味が無い女子なんか眼中に入らないでしょうよ…」
「でも跡部の興味が知りたいんだもん」
「何、アンタ好きなの?跡部の事」
「いや?ただの興味関心」
じゃあいいじゃないか。ほっとけば。
そんなのに私を使うな。
「…跡部は勝気な女の子が好きだと、前言ってたよ。はい、これでいいね?」
「どうして知ってるの。でもそれじゃあダメ。タイプと好きになるのは結構違ってくるの」
「私これでも生徒会メンバーだから。新聞部の取材で答えてた。それにしてもそんな事言った
てなぁ…」
「てことでよろしく」
「そんなっ」
「あ、ほら。跡部が来た」
その言葉に後ろを振り返ると、ちょうど教室に入ろうとしている跡部の姿が。
それを見て、友人は「まかせた」と言ってさっさと出て行った。
「あ、ちょっと―――、はい。何でしょうか会長?」
手を伸ばして友人を捕獲しようとしたが、それは無駄で、その手をじ、っと跡部に見られた。
「何話してたんだ?」
「いや、別に何も。たいした事は」
「フン…まぁいい。他のメンバーは?」
会長の机に乗せられていた書類の山を見ながら跡部が言う。
「副会長は今日風邪で早退。書記二人は先生の所に書類の確認の旅。監査は部活の方に顔出し中。
後少ししたら戻ってくると思う。で、会計はここで予算確認兼、お留守番です」
「何だ、東堂のヤツ風邪引いたのか」
「うん。3時間目終わった後くらいで帰ったって」
困った。
さっきまで話していた内容が内容だから、下手に意識してしまう。
もしかしたらこれを狙っていたのかも。…いや、深読みしすぎか。
「で?何だって伊藤はここにいたんだ?」
伊藤とは友人の事である。
「え?あ、お昼の残ってた弁当を食べにと…、雑談しに?」
「何で疑問系なんだ」
「いや、まぁ…。その、ねぇ?」
跡部は顔をしかめながら、こっちを見た。
そんな顔しないで。
まさかミッションについて話すわけにはいかないでしょう。
というか私はミッションを遂行しないといけないんだろうか。バッくれていいような気がする。
いい…よね?いいんだよね?
だって、あんな…跡部を惚れさせるとか無理でしょう。ねぇ隊長?
「何ブツブツ言ってんだ?」
「え、声に出してた?」
「何て言ってるのかまでは聞こえなかったがな」
それはセーフだ。
でも、そうか。声に出ていたのか…。
今日、私はおかしいのかもしれない。そうとしか考えられない。
「ね、跡部」
会長席の前に立つ。
不審そうに私を見上げてくる。
私は今、どんな顔をしているのだろうか。
そして、何を言おうとしてるんだろうか。
「1週間。1週間で私を好きになって」
「は?」
「好きになったら私の勝ち。ならなかったら跡部の勝ち」
ぽん、と跡部の左肩に手を軽く置いた。
そしてしばらく静寂が過ぎた後、私の犯してしまった重大なミスに気付かされた。
結局ミッションを遂行してる。
置いていた手をすばやく戻した。
「あ……。ご、めん。忘れて。気の迷いだから…本気じゃない」
そう言うと、跡部がふっ、と笑った。
「おい、。お前…俺の事好きじゃねーだろ」
まるで面白い物でも見たかのような顔をし、その顔の前で手をくんだ。
ニヤリと笑っている。
言われた事は図星。でも肯定をしようと行動出来なかった。
「逆だろう。…いいか?1週間でお前が俺の事を好きになったら俺の勝ち。ならなかったら俺の
負け…つまりお前の勝ちだ」
いいな?と言って笑った。
何を言っているのだろう。これじゃあまるで……。
「ま、待って。跡部のメリットが無いじゃない!」
「あぁそうだ。とりあえず今度の日曜開けとけ」
「はぁ?」
詰め寄ろうとした所で扉が開いた。
部活に顔出してた監査が戻ってきた。
「何してんですか?」
「……別に何も」
「お前それ好きだな」
監査は?を頭に浮かべ、自席に着く。私もそれにならって席に戻る。
跡部は今だ笑っている。
「会長。何かいい事でもあったんですか?」
「ん?まぁな…」
なぁ?と私を見てくる。
無視をして書類に戻るが、頭の中はぐちゃぐちゃだ。
一体何がどうなってこうなったのだろう。
そして私のミッションはどうなっていくんだろうか。
とりあえず、日曜が楽しみだ。
END
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