「うっわー・・・。」
補習が終わると同時に外はどしゃ振りの大雨。
Wet with your Kiss
「なんだよー・・・もうー・・・。」
教室に一人、ポツンと座って雨が止むのを待つ。
私だけが補習で、他のみんなはとっくに帰ってしまった。
窓の外は相変わらずで、冷たくて重そうな雨がガラスを打っている。
「はぁー・・・。」
今日は、最悪な一日だ。
朝、寝坊して遅刻した上に授業中のテストにあと一点で一人だけ落ちて一人だけで補習。
補習が終わってやっと帰れると思いきや今度はこの雨だ。
しかもお母さんに電話して、雨だから迎えに来てって言ったら雨だから行きたくない、と。
バカ彼氏の仁王雅治はどこにいるかわからないし。
なんなのー・・・本当に。
「はぁー・・・。」
今日何度目になるかわからないため息をついて、机に伏せる。
再び静かになった教室に、雨の音だけが響き渡る。
「・・・・・・。」
もうただ待っているだけでも仕方ないから、ズブ濡れになってもいいから帰ろうかなー・・・。
でもなんか家でお母さんと顔合わせたらケンカしそうだしな・・・。
そんなことを繰り返し繰り返し考えていた。
「・・・?」
廊下のほうから、足音が聞こえる。
ハッとして顔を上げれば、外はもう大分うす暗い。
「げ・・・。」
雨は相変わらず降り続けている。
ど・・・どうしよう!?
ちょっと待って、怖い!
外が薄暗いのに加えて廊下から聞こえる足音。
ゆっくりとした歩調で、段々と近づいてきている。
怖くて動けずにいる私にかかわらず、足音はどんどん近づいてくる。
そして、教室のすぐ前で、足音は止まった。
ガラリと音をたてて入ってきたのは。
「お、。」
「ま・・・雅治・・・。」
そう。
入ってきたのは、彼氏である仁王だった。
「ビックリさせないでよ!」
「・・・なんもしとらんじゃろが。」
ホッとして、再びため息をつくと、雅治はちょっと不思議そうな表情をして口を開いた。
「なんでまだおると?」
「補習にプラスして雨で帰れませんー。」
「・・・・・・。」
「何か言ってよ。」
「今日補習にひっかかったの、だけじゃろ?」
「・・・バカで悪かったわね。」
「そこまで言うとらん。」
そう言って、雅治はちょっと笑った。
笑った顔はいつもより大分幼くて可愛い。
「雅治、どうやって帰るの?」
「わからん。気分じゃ気分。」
「何それ。」
のん気な雅治の返事に、今度は私が笑った。
「。」
「ん?」
「好いとうよ。」
「は・・・!?な・・・何いきなり・・・!?」
雅治の口から飛び出した予想外の言葉に思わず焦る。
顔がどんどん熱くなっていくのがわかる。
「・・・気分じゃ。」
そう言って、ニヤリと笑った雅治に心臓が素直に反応する。
顔が真っ赤になってるのは鏡を見なくたってわかる。
恥ずかしくなってフイッと雅治から顔を背けて、窓の外を見る。
相変わらず降り続けている雨。
「・・・まだ雨降ってるね。」
「・・・・・・。」
雅治からの返事はない。
「まさは・・・っ!」
不思議に思ってクルリと振り向いてみれば、いきなり雅治の顔が近づいてきて、キスをされる。
思わず目を閉じて触れるだけの、優しいキスをする雅治の唇を感じる。
「・・・っ!」
雅治の唇が一回離れて、終わりかと思ったらもう一度キスされる。
今度は、深く。
私の唇と歯列を割って、入り込んできた雅治の舌。
ゆっくりと私の舌と絡める。
その感触にゾクリと背筋が震え、雅治の腕をギュッとつかむ。
「んっ・・・ぁ・・・っ!」
息を吸う間も与えず、何度も何度もキスされる。
雅治の腕をつかんでいた手も、いつの間にか雅治の手と握り合っている。
「・・・っ・・・はぁっ・・・。」
ゆっくりと離れていった雅治の唇と私の唇の間に、名残惜しそうに銀の糸がひく。
「・・・はっ・・・もっ・・・長いって・・・!」
「これが普通じゃ。」
唇をぬぐいながらニヤリと笑った雅治。
アンタの普通は普通じゃないって。
そう言おうとしたら。
「お、雨止んどるぜよ。」
「あ、本当だ。」
窓を指差した雅治につられて窓を見る。
さっきまでの雨はウソみたいに、外はキレイな夕焼け空だった。
「・・・俺たちの愛で雨が止んだんじゃ。」
「頭沸いてんじゃない?」
そう言いながらも、差し出された雅治の手に自分の手を重ねた。
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